死役所12巻
あずみきし(新潮社・バンチコミックス)
なんだかんだ多忙で、気がついたら1ヶ月空いてしまっていました…
その間に『死役所』最新巻が発売。
前巻の予告からも分かりますが、生活保護・無職がテーマの話があり、また社会的問題が淡々と語られます。
職員のエピソードはまたあまり無いのか…と思っていたら、最後がある意味驚きの終わり方。ここでこうくる?!というか。
12巻出たばかりですが、13巻はどのように始まるのですかね。今から気になります。
【各話サブタイトル・主人公】
・かわいそうな人
→比護亜季保。失業中の女性。
・おててつないで
→福原潤矢。継父に虐待されていた幼児。
・夜ノ目町爆弾事件
→金子行亮。爆弾事件の容疑をかけられた牛乳屋の次男。
【感想】
一言でいうと、今巻は親がクソ。
最後の話は違いますが(親はほぼ出てこず兄弟愛の話)。
しかし、全話通して主人公に共感もあまりできず…今巻は『死役所』の中でも、あまり好きではない巻になってしまった感じです。
(そう言われてみれば前巻も今ひとつでしたね…。塙くんとか佐尾とかミチルちゃんとか泉水さんとか、魅力的なキャラクター最近見ませんね…)
「かわいそうな人」亜季保さんは、仕事選ばなければ就職できたのではないの?
「デザインの仕事したい。違う仕事には就きたくない。病気だし決まらない。でも生活保護を受けるのは社会の底辺だから嫌」
…?
そんなこと言っている場合?
二束三文で物売って、何とか食い繋ごうとするほど追い詰められているのに、必死さが無いというか。
真面目で良い人なのだろうけど、理解不能。
無職の娘の家に居候して、パチンコをやめられないお気楽な父親も理解不能。
昔真面目に働いていた頃の父親を思い出して今の父親を否定できないような描写も出てきますが、何故父親が気楽なのか分からないと言いながら、あなたも結構気楽に見えるけど…と思わずにはいられない。
というわけで、予告に出てきたメインの話が理解不能の嵐で、気に食わない1冊となってしまいました。
ただ、さすが『死役所』というべきなのですかね。
一見きちんとした考え方に見える若い人でも、どこか必死でないというか、自分を本当は悪いと思っていないというか…こういう人、リアルなのかな、と。
なんだかんだ毎巻考えさせられる『死役所』というところは健在でした。
しかし、今巻のキーは恐らく3番目の話。
エピソード自体は特になんということもないのですが…主人公の歩んだ人生が、シ村さんにリンクします。
なので、この話については下で語ります↓
◆反復読後の小部屋◆※既読推奨
「夜ノ目町爆弾事件」で、ついに冤罪が取り上げられます。
ただ、死刑になったわけではないので、職員としてはやって来ません。
自分を思う兄に迷惑をかけたくない一心で、やってもいない爆破事件の罪を自白してしまう主人公。刑期を全うして、兄と再会し、社会で静かに生きて亡くなり、死役所へ。
普段なら「お客様」に感情を移入しないシ村さんですが、さすがに「冤罪」というキーワードには敏感なようで。
まさかの「お客様」に、自分の昔話をしそうになるところで12巻は終わりです。
本当に13巻でシ村さんの真相が明らかになるのでしょうか…
「おててつないで」だけ触れていなかったので、ここで少し。
虐待死は2人目の登場でそのエピソードに目新しさは無いのですが、小さな子供を裏切られた憎しみだけで殺したハヤシくんが、死者の男の子と触れ合いながら自分の気持ちを語ります。
ハヤシくんはミチルちゃんの言葉をきっかけに(4巻参照)罪と向き合い始めましたが、憎しみは消えず反省はしていない模様。殺した人間の不幸しか願えないとは、どこまで強い憎しみなのかと思いますが、真っ当な人間はそう簡単に人は殺せないので、憎くて当たり前といえば当たり前ですよね。
シ村さんは、ハヤシくんが罪と向き合い始めたことに感心していた素振りも有りましたが、共感は全くしていないのですね。それに少し驚きました。
でもシ村さんは、いくら他の職員さんたちと仲良くしていても、各々の罪に共感や同情は一切寄せていないですものね…あのイシ間さんにさえ。
その心はどこにあるのか、どのようなものなのか。
ここまで読んでもなかなか見えてこなくてじれったい部分もあるのですが、これが解決すると、『死役所』は終わりだと思うので、続いて欲しい気持ちとまた複雑です。
私はまりあが絶対許せないので、ハヤシくんには共感しています。
シ村さんがいうハヤシくんの幸せな未来ってそこにあったのかな。
また切なくなりました。